IT先端事務所を目指す
黒野晃司税理士事務所
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(以下の文章は、黒野 晃司が岡崎信用金庫「調査月報」18年5月号に投稿したものです。)

電子申告の経過と未来

今年のNHKの大河ドラマ「功名が辻」は、山内一豊の妻千代が主役です。山内一豊といえば、かつて私が、坂本竜馬ゆかりの地を訪ねて高知へ行った際は高 知城へも足を運びましたので、懐かしく思います。さて、その千代役が仲間由紀恵さんですが、仲間由紀恵さんといえば、もうひとつの顔は確定申告のキャンペーンキャラクター です。ポスターを目にされた方も多いことと思います。また、国税庁のe-Taxのホームページに登場しています。電子申告開始から3回目の確定申告期を終えました。私は、3年前 の立ち上がりから東海税理士会情報システム委員の一人として普及に深く関わってきましたので、電子申告電子納税制度について振り返り今後の展望について述べたいと思います。

1. 電子申告の歴史

1) 平成9年

12月 「行政情報化推進基本計画の改定について」閣議決定

2) 平成11年

6月 申告手続の電子化等に関する研究会 第1回会合(以後12年4月の第10回会合で「望ましい電子申告制度の在り方について」として取りまとめ)
12月 「ミレニアムプロジェクト」内閣総理大臣決定

3) 平成12年

11月(〜13年3月) 電子申告実験
東京国税局管内の2税務署において、個人、法人納税者及び納税者から委任を受けた税理士の協力で電子申告実験 が実施されました。参加者は法人498社、個人273人(内税理士委任先641件)でした。参加者へのアンケートでは、電子申告導入後は利用したいという回答が「場合によって は利用する」を含め95%ありました。
11月 高度情報通信ネットワーク社会形成基本法(IT基本法)成立

4) 平成13年

1月 内閣の「高度情報通信ネットワーク社会推進戦略本部」(IT戦略本部)が「e-Japan戦略」を策定
「市場原理に基づき民間が最大限に活力を発揮 できる環境を整備し、5年以内に世界最先端のIT国家となることを目指す」ことを目的に、「電子情報を紙情報と同等に扱う行政を実現し、幅広い国民・事業者のIT化を促 すこと」が重点政策分野の1つとされました。
3月 IT戦略本部が「e-Japan重点計画」を策定

5) 平成14年

6月 IT戦略本部が「e-Japan重点計画-2002」を策定
12月 行政手続オンライン化法成立

6) 平成15年

7月 IT戦略本部が「e-Japan戦略U」を策定
7月 国税関係法令に係る行政手続等における情報通信の技術の利用に関する省令施行(電子申告電子納税の手続きを定めた財務省令)
8月 住民基本台帳ネットワーク第2次運用(住基カードの発行開始)
8月 IT戦略本部が「e-Japan重点計画-2003」を策定
2005年に世界最先端のIT国家となるとともに、2006年以降も最先端であり続けることを目指す

7) 平成16年

1月 公的個人認証サービス開始
2月 名古屋国税局管内(愛知、岐阜、静岡、三重)が全国に先駆けて個人の所得税、消費税の電子申告を開始
3月 名古屋国税局管内の法人の法人税、消費税の申告と納税、申請・届出の一部を開始
6月 電子申告全国に展開
6月 「電子政府構築計画」を改定

8) 平成17年

1月 地方税の電子申告開始(岐阜県、大阪府、兵庫県、和歌山県、岡山県、佐賀県)
8月 地方税の電子申告拡大(埼玉県、東京都、神奈川県、静岡県、愛知県、島根県)

9) 平成18年

1月 地方税の電子申告拡大(46都道府県および13政令指定都市)
3月 「オンライン利用促進のための行動計画」策定
18年度中にe-Taxソフトのダウンロードによる利用を可能とする

10) 平成22年

 オンライン利用率50%を目標

2. 諸外国の事情

国名 対象年 電子申告率 個別事情
イタリア 2003 所得税   100% 2001年紙による申告書の提出を廃止
韓国   源泉所得税 85.4%
総合所得税 75.0%
法人税   97.1%
2万ウォン(約2,400円)の税額控除
オーストラリア 2002 所得税   81% 添付書類は仲介者が保管
アメリカ 2003 49.2% 社会保障番号を使用
プッシュホンによる電話申告
ドイツ 2002 3.9% 添付書類を別郵送
フランス 2002 1.8% 添付書類を別郵送
日本 2005 0.3%  

3. 電子申告を始めるには

事前に次のことを行っておく必要があります。
1) インターネットに接続できるパソコンを用意する
2) ICカードリーダライタを用意する
3) 電子証明書を取得する
電子証明書は
(1) 商業登記認証局
(2) 公的個人認証サービス
(3) その他民間11団体
発行のものが利用できます。
4) 国税の「電子申告・電子納税利用開始届」を提出する(ホームページからオンラインで提出することも可能です)
 その後の申告や申請手順については、お近くの税理士または東海税理士会岡崎支部(0564-25-6622)へお尋ね下さい。日本税理士会連合会電子認証局は全国の 税理士約69,000名を対象に電子証明書を発行しており、多くの税理士はその電子証明書を持っています。

4. 電子納税

取引銀行とインターネットバンキングの契約をすれば、会社や自宅で納税ができます。一部の銀行ではATMからの納税もできます。毎月発生する源泉所得税の納付の場 合でも銀行の窓口まで出向かなくてもすみ、また、納付書が手元になくても税務署に受け取りに行く必要がないので、便利かと思います。ただし、住民税の納付はまだ電 子化されていません。

5. 電子申告の今後

3月に公表された「オンライン利用促進のための行動計画」によれば、
  • e-Taxソフトのダウンロードによる提供
  • e-Taxソフトの改善
  • 運用時間の拡大
  • 添付書類のオンライン送信
  • 源泉所得税の電子署名省略
  • 国税庁ホームページからの電子申告
を図り、また、インセンティブとして還付申告の処理期間を短縮し、現在1%以下の利用率を平成20年には8%(大規模法人の申告などは50%)を目指すとしています。 ただし、公的個人認証サービスの普及が前提です。公的個人認証サービスによる電子証明書を格納する住基カードの普及率が平成17年8月末で約68万枚(0.54%)と低迷し ていますが、普及対策として、証明書自動交付機利用機能をつけたり印鑑登録証を兼ねるなどの用途の拡大が検討されています。
運転免許証を持っている人が、3年または5年に1回更新のために都合をつけて出向くのはそれが必要だからです。また、多くの方が印鑑登録をされているのはそれを前提と した手続きがあるためです。現在のところ、時間を割いてまで電子証明書を取得しようという動機付けがないのは、その用途が限られているためだと考えられますが、いずれ は、印鑑登録と同様公的個人認証サービスによる電子証明書を持っているものとしての手続きが一般化することになろうかと思います。人より先んじて電子証明書を取得し、 電子申告を利用することが将来へ向けてのアドバンテージとなることと思われます。

6. おわりに

電子申告の現状は本人確認を厳密に行うため、電子申告導入目的のひとつである利便性向上に反して使い勝手の悪いものと感じる部分もありますが、これらの問題点も解消さ れつつあります。「オンライン利用促進のための行動計画」で挙がっている対応策は、かねてより税理士会が要望していた事項が多く取り上げられており、障害の多くは除か れようとしているといえます。ただ、電子申告では「収受印のある申告書控」はその性質上存在しませんので、融資等の際それを求めることのないよう金融機関や公的機関へ の周知することが課題です。
平成16年秋に東海税理士会が行った会員へのアンケートでは、半数以上が“様子見派”でしたが、遅くとも22年オンライン利用率50%となれば、様子見の時期を過ぎ、 多くの税理士が利用していることでしょう。
さあ、次回の申告から電子申告で行いましょう。

電子申告について詳しいことは以下のホームページをご参照下さい。
 国税  http://www.e-tax.nta.go.jp/(国税電子申告・電子納税システム)
 地方税 http://www.eltax.jp/(地方税ポータルシステム)